刊行図書
更新時期を迎えるエスカレーターの台数が増え、更新工事や更新が困難な場合の主要部品の取替え等による延命化対応工事が増えつつある。これらは、短期間での施工が要求されるなか、施工上の制約が多く、かなりの時間と費用がかかるなど多くの課題を抱えている。
今回作成したハンドブックは、34の多くの実例でどのように対応したか解りやすく解説し、課題解決でご苦労される担当者の方々に対してソリューションを提供することを目的に作成しました。
鉄道事業者にとって、駅ホームにおける安全性の向上は重要な課題です。ホームドアは、ホームにおけるお客様の転落や列車との接触を防止する設備として社会的ニーズが高まり、近年急速な整備拡大が進んでいます。
一方で、鉄道事業者各社局はホームドアを整備するにあたり、本体設置やホーム補強に伴う費用、ドア位置の異なる複数の車種への対応など様々な課題を抱えており、その解決に向けた技術革新が期待されています。
当協会では、2013年1月にホームの安全確保技術小委員会を発足し、活動方針として、①鉄道事業者のホームドア及びメーカーの最新技術と共に、仕様の考え方・運用状況・課題等を調査し、ホームドアの知見を深めること、②上記にて得られた知見を集約し、これからホームドアに携わる会員に向けた、ホームドア導入の設計条件等が判断できるハンドブックを作成することとしました。
以上の取組みにより、2017年3月に最初のホームドアハンドブックを発刊しました。今回は、2021年版として、日々進化するホームドアの最新技術等を新たにし、さらに各種の現地施工方法やトラブル事例を追加しました。
当協会会員を始め、ホームドアのご担当者や、これから導入に向けて検討している事業者の皆様に活用していただければ幸いです。
(「はじめに」からの抜粋)
平成16年度に発刊した「鉄道駅のエスカレーターハンドブック」について、大々的な見直しを行い第2弾となる改訂版をまとめました。
前回のハンドブックでは、いわゆるバリアフリー法施行後の設置工事が盛んに行われていた時期であり、これらの事例を紹介、解説することを主眼に、設置計画から維持管理までエスカレーター全般について網羅したもので、全国の鉄道事業者をはじめとする関係各位に有益な情報を提供し大きな反響を呼びました。
本刊では、鉄道事業者の直面している課題とそれに対してどのように取組んでいるか、メーカーや施工業者はそれに対してどのような解決策を準備しているか、また増え続けるエスカレーターの運行管理や保守コストの低減のためにどのような取り組みがなされているかなどについて取り上げました。具体的にはエスカレーターを新設することが困難な駅への対応が課題としてあったため、貨車や保守用車により、完成品に近い状態で現地搬入することにより仮囲い期間を大幅に短縮した事例など当時の先進的な施工方法について紹介しました。
さらに技術の進歩により開発された幅狭や薄型など新しいタイプのエスカレーターについての解説や、安全で効率的な運行管理および保全方法が課題としてあったため、体系的な解説や保全に関する鉄道事業者とメーカーの取組み、遠隔監視についての解説などを盛り込みました。
現在でも、バリアフリー施設としてエレベーターの整備が着々と進んでいますが、エスカレーターは連続・大量輸送機能を有し、一般の鉄道利用者のサービス上なくてはならない重要な移動手段であるのと同時に、交通弱者にとってもなくてはならない設備と認識されております。
一方では、エスカレーター設置台数、高齢者およびキャリーバッグ利用者の増加に伴い様々なトラブルが発生し、これまでになく安全性に対する社会的な問題意識が高まっていることから各鉄道事業者において対策、仕様が検討、実施されてきました。
また、経年エスカレーター更新工事の急増に加えて、施工が困難な駅が多く残存していることも新たな課題となっています。
そこで今回は、これらの環境の変化も視野に入れ、前回版を踏襲しつつも大幅に加筆し装いを新たにオールカラー版として発刊いたしましたのでご期待ください。
以下に盛り込まれている主な内容をご紹介いたします。
東日本旅客鉄道(株)(以下JR東日本)では、このたび「機械関係標準仕様書集」の改訂が施行されました。
「管工事標準仕様書」は、平成27年3月以来の改訂、「機械工事標準仕様書」は、平成27年3月以来の改訂、「昇降機工事標準仕様書」は、平成26年6月以来の改訂と久しぶりの改訂となります。
当協会では、これに付きましてJR東日本からの依頼をうけ、新冊「機械関係工事標準仕様書集」として販売いたしておりますのでご案内申し上げます。
この「標準仕様書集」は、JR東日本の機械関係の工事を請負、施工する場合は、必要不可欠なものです。是非ご購入ください。
当協会の「機械設備メンテナンス技術小委員会」は、2007年発刊以来10年が経過した「鉄道機械の事故・故障事例集」をリニューアルする取り組みを2017年から行ってきました。
2007年版の事例集は、鉄道現場で発生する機械設備の事故や故障において、過去の失敗事例が活かされず、同じような「失敗」が繰り返されていることに着目し、類似の失敗を繰り返さないためのバイブルとして製作された経緯があります。これはJR各社が保有する機械設備を対象に設計・工事・メンテナンスにおける事故や故障の失敗事例を集約し、技術的観点から体系的に整理したものであり、これまで全国の鉄道会社等の機械系技術者の教育等に広く活用されてきました。
リニューアル版の製作においても、2007年版を踏襲して全国の鉄道事業者等の機械関係業務に役立つものを目指すこととし、最新の事故・故障事例を充実させるとともに、失敗事例の「①分かりやすさ」「②オープン化」「③データベース化」の3つの新たなコンセプトを掲げ活動を進めてきました。
① わかりやすさ
失敗事例を「事象概要、原因、処置、再発防止、注意点」に構造化し、且つ内容をシンプルにすることで、利用する機械系技術者にとって分かりやすく、活用しやすいものとしました。
② オープン化
鉄道の機械設備に関わる失敗事例は、会社内の限定された範囲で教訓として活用されることはあっても、他の鉄道会社との共有化された知識としてポジ ティブに活用される仕組みがないのが現状です。そこで今回は広くオープンな情報共有ツールとすべく、JR各社の他、公民鉄者局の失敗事例も協会のネットワークを活用し、集約することとしました。
③ データベース化
失敗事例には分類(お客さま、運転支障、コンプライアンス、機械故障、労災)や機械名称等の検索タグを付与し、市販の汎用ソフトでデータベース化することで、機械関係業務の様々な場面(安全教育や施工検討会等)で欲しい情報を簡単に検索可能としました。更に2007年版にもリニューアル版と同等の検索タグを新たに付加することで、データベースの統合を図り、計375件から一体的に検索できるような仕組みとしています。
今回製作しました「鉄道機械の事故・故障事例集」リニューアル版についても業務の中に取り入れ、最新の失敗事例から学び、同じような失敗(事故・故障)を起こさないためのバイブルとして使っていただければ幸いです。
(「発刊にあたって」からの抜粋)
1970年代の湾岸戦争は、我が国のエネルギーに対する考えを根底から揺るがせました。
それを機に、石油代替エネルギーの研究開発が高まる一方、エネルギーを無駄なく使おうと言う『省エネルギー』の考え方も同時に進行を始めました。
あれから40年近く経ちましたが、エネルギー事情は益々困窮の度を加えております。また、国民の生活レベルは、向上の一途をたどり、最早冷暖房を完備しないビルなど存在し得ない状況であります。ことに「空調」は有難い存在から、あるのが当り前の世の中になりました。
それだけに、成り行き任せのエネルギー使用は膨大な経費を生むだけでなく、地球温暖化現象に大きな影響を与えます。
鉄道事業では駅、駅ビルは根幹をなす施設です。近年では、駅が街となり人々がアメニティを求め集まります。我々はそこに快適な空間を作り出す義務があると同時に、限りあるエネルギーを無駄なく有効に使うという使命も帯ています。
「エネルギーマネージメント技術小委員会」は平成16年度末よりこの間題に取り組み、3年の歳月を掛け、ここに"オペレーターからエグゼクティブ"まで座右に置いて頂きたいハンドブックを刊行することが出来ました。
「ビルの空調を計画・設計する人」「その妥当性を判断し決定する人」そして「運転管理するオペレーター」あらゆる視点に立って書かれた本書です。特にこれまで、設計思想がきちんと現場で生かされているか、現場オペレーターの方の意見が設計に反映されているかの問題点が指摘されることが多くありましたが、この点についても本書では大きく取り上げました。
委員会は、鉄道事業者、駅ビル関係者、そして施工会社の設計者等多彩で実務経験豊かな方々で構成致しました。11月末刊行予定です。ご期待ください。
日本では長期エネルギー戦略として2050年までに温室効果ガスを80%削減することを目標に掲げており、各鉄道事業者も中長期計画等でエネルギー削減目標を掲げて取り組んでいます。すでに鉄道は他の交通手段と比較して非常にエネルギー効率が良い乗り物と評価されています。
一方、各鉄道事業者はホームドアの設置等が急速に拡大しており、それに伴うエネルギーの消費も増大しています。このような中で、増加する機械設備の計画、運用、メンテナンス等に携わる者として、エネルギー削減は継続的な課題としてとらえなくてはなりません。そのため、当協会のエネルギーマネジメント技術小委員会では、継続的にエネルギーマネジメントにかかわる技術調査研究を実施してきました。
今回4年前から鉄道における信号通信機器室の空調設備をターゲットといたしました。鉄道の安全安定輸送に直結する空調設備のエネルギーマネジメントにおいては、空調設備としての性能をしっかりと確保した中で省エネルギー化を図る必要があるため、発熱体である信号通信機器や熱負荷に対して影響が大きい建築材料などについても幅広く調査を行いました。
そして当小委員会の委員が遮熱対策等において空調設計で得た豊富な経験での知見も組み入れ、「機器室空調の省エネに向けた提言」としてまとめております。このように経験豊富な方の教訓は空調設計に携わる方にとって非常に参考になると思いますので、第二編「空調設備の設計」として掲載いたしました。提言と合わせて空調設計やメンテナンスに携わる方々に活用して頂ければ幸いです。(「はじめに」からの抜粋)
各鉄道事業者が交通機関を利用する高齢者、障害者等の移動制約者を対象とした段差解消の施策として昇降機の整備を進めていくにつれて、お客さまにとってなくてはならない設備となったことで、故障発生時はもちろん、点検や改修工事におけるダウンタイムの低減が課題となっています。
そこで、当協会の昇降機技術小委員会では、今後も鉄道各社にとって前述の施策等により年々保有台数が増え、昇降機のダウンタイム低減が共通の課題となっていることを踏まえ、特に旅客流動を確保する上で検討課題が多いエスカレーターに焦点を当て、現状の課題、対応策等の情報の共有化を図れるように本ハンドブックを作成することとしました。
本ハンドブックでは、ダウンタイムを生じる要因として、「故障」、「点検」、「工事」と3つのケースに分類しています。それぞれのケースにおいて、ダウンタイムの低減事例を特性要因図により体系的に整理することで、ダウンタイム低減方法の考え方、思考の方向性を示すとともに、全体を俯瞰できるようにしました。更に、事例を活用しやすいように一件一葉にまとめ、答えそのものが見つからなくてもヒントを見出して、少しでも担当者の実務に役立つように工夫しています。また、故障分析によるダウンタイムの定量的評価や、保全方式の解説を記載するなど、より専門的に知見を深められるような内容も盛り込みました。本ハンドブックが、鉄道駅のエスカレーターのダウンタイムに悩む担当者が解決策を見出す一助となれば幸いです。
(「はじめに」からの抜粋)