協会の目的と目指す方向、並びに取組みの重点を具体化し、2021年度から2023年度まで、3年間程度の中で取り組む事業は以下の通りです。
3.1 調査・研究事業、技術・サービス提供事業
協会の立場を生かして、関係各位からのご協力を頂くことにより各事業者個々では取り組みがたい課題の調査研究を進めることや、客観性・不偏性のある結論を導き出していくこと等を主眼に、調査・研究事業を進めます。
また、当協会の公益的な立場に関わって期待される様々なニーズ、特に地域鉄道を含む各鉄道事業者を協会として可能な範囲内で支援していく役割を含め、関係各所からの技術・サービスの提供要請に応えていきます。
以下に、中期的な重点取組み事項(1)~(4)項毎の活動計画について述べます。
(1) 安全性向上への取組み
(車両関係)
- ①「有益情報」の配信・活用
- 有益情報の発信先拡大に取り組むと共に、配信先に対して新たに要望調査を実施して、ニーズが高い機器や車種を重点的に配信していきます。
- ②「車両の安全性向上調査研究」の推進
- 安全性向上調査研究については、「ブレーキ性能の安全性に関する調査研究」及び「故障車両の牽引方法に関する調査研究」を実施します。
- ③「地域鉄道との活動」の拡大
- 月検査の現車検修の流れを基本として部品修繕検修も含めた内容、有益情報事例での現車研修など有効な研修を行います。
- ④「検修技術向上調査研究」の推進
- 検修技術向上調査研究部会では、現場に直結した現場社員参加型の「現場立合交流会」の活動を推進します。
- ⑤台車枠の安全性向上に関する研究会
- 学識経験者、JR各社及び鉄道車両メーカー主体で構成される台車枠の安全性向上に関する研究会を継続し、設計・製造・保守の面から検討し、台車枠の安全性向上に取り組みます。
(機械関係)
- ①「機械設備メンテナンス技術小委員会の取組み」の推進
- 鉄道機械設備の事故・故障事例266件を基に「鉄道機械設備の事故・故障事例集」を発行します。また、過去の事例集も含めて検索システムを構築し、より活用しやすくします。
(2) 技術革新・先進技術への取組み
(車両関係)
- ①「鉄道に関する技術上の基準を定める省令第70条等に関する調査検討」
-
- 〇JISの解釈基準への引用に関する検討作業部会
- JISの解釈基準への引用について、該当するJISの引用に関する解釈基準、解説の具体的な検討を加えて議論を行います。
- 〇車両に係る検討部会
- 今後のモニタリング機能を活用した保全体系の普及を見据えて、技術基準省令等のあり方について検討を行います。
- ②「台車の探傷精度向上の調査」の検討
- 国交省主催の「台車枠の探傷検査に関する調査検討委員会」に協会としてオブザーバーで参加しています。今後、具体的な台車枠溶接部の探傷方法に関して、研究会方式等関係者の動向を勘案し取組み方法を検討します。
- ③鉄道車両用電子機器の保守における信頼性向上作業部会
- 電子機器保守作業場の改善事例、保守事例、電源装置のライフサイクル管理、プリント回路板の保守の現状と課題等及び電子機器不具合情報の共有化について、報告書としてまとめます。
- ④「今後の車両検修に向けた車両データ活用の調査」の推進
- 各種データ分析に適応した分析手法の適用事例研究、モニタリング保全の概要と検修データを活用した事例の研究を行い、各所のデータに関して分析手法の展開を行います。
- ⑤「お客様サービスへの取組み(車両設備)」の推進
- 車両設備等の情報については、今後とも車両担当課長連絡会などを通してニーズの把握に取り組みます。
- ⑥「鉄道車両用材料の燃焼特性に関する共同研究」
- EN規格及び鉄道総研のCCM-IR法(コーンカロリーメーター燃焼試験+FTIR)でのガス成分評価の比較検討を行うとともに、他の鉄道車両用材料について試験の種類を追加し、CCM-IR法によるガス分析評価指標の検討を行います。
- ⑦鉄道車両用材料における燃焼規格に関する調査検討
- 煙と火勢の定量化および測定方法に対し、データを蓄積しその妥当性を確定していきます。合わせて新たなガス成分評価手法の検討も継続し、ガス成分評価の業界標準案の作成を進めます。
- ⑧「検修業務効率化への取組み」の推進
- メンテナンスコストの低減、将来想定される検修従事者の確保困難などの課題解決のため、検査方式の変更も含めた検修業務の効率化について取り組みます。
(機械関係)
- ①「昇降機技術小委員会」の取組み
- 昇降機の停止時間の短縮に関する研究に取り組み、お客様のサービス向上策を検討します。また、エスカレーターの停止時間の分析を行い、改善事例の整理体系化を実施し、それらの具体的事例を整理し、ハンドブックを作成します。
- ②「ホームの安全確保技術小委員会」の取組み
- ホームドアの種々の課題を整理し、それらを集約して公民鉄の鉄道事業者も含めて役立つホームドアのハンドブックの改訂版を作成します。
- ③「エネルギーマネジメント技術小委員会」の取組み
- 信号通信機器室の空調設備について、エネルギーマネジメントを考慮した空調のあり方とともに、信号通信機器自体及び建物構造の調査研究を実施し、「信号通信機器室空調設備におけるエネルギーマネジメントハンドブック」を作成しました。今後、その成果を広めるため、研修会等を実施します。
- ④「駅サービスロボット小委員会」の新設
- 駅への自律移動型サービスロボット導入推進に向け、委員会を新設し、ロボット導入推進を図る活動を実施します。
(貨物関係)
- ①「車両検修業務の見直し」の推進
- 検査期限の迫った貨車を列車編成の中から1両ずつ抜き取り、検修箇所に回送して検査を施行していますが、入換作業を簡略化出来る「編成交検」の可能性について「貨車の効率的な運用に関する調査研究」として取り組みます。
- ②「車両検修内容の見直し」の推進
- 「コキ107形式及びコキ200形式コンテナ貨車検査周期延伸」及び「新形式電気機関車の検査周期延伸」に取り組みます。
(3) 技術継承のための教育訓練等への取組み
(車両関係)
- ①「効率的な車両検修に向けた検修設備の実務検討会」の推進
- 鉄道車両メンテナンス設備事例集の最新版を作成するため、基礎資料の収集や本検討会での検修設備に関わる課題に関する情報共有化を行います。
- ②「鉄道車両の機能の安全と設計知見の調査研究」の推進
- 鉄道車両の安全設計(機能の安全)について、基本的な考え方や事故・故障事例等からの知見をマニュアルとして体系的にまとめ、設計者の育成・技術継承に活用できることを目的として活動します。
- ③「ブレーキシステム・装置」に関する図書の刊行
- 電車及び新幹線のブレーキシステム・装置を設計する際に必要な技術ポイントをまとめ、鉄道事業者のブレーキ関係の設計に携わる技術者の参考となる図書を作成します。
(機械関係)
- ①「機械設備業務を継承する機械技術継承セミナー」の推進
- 「機械設備業務のマネジメントを継承するセミナー(若手社員向け)」と「既受講者のフォローアップ」との融合を図ったカリキュラムを実施し、機械部門の発展に寄与します。
- ②「鉄道事業における機械設備の課題を整理し解決するための情報展開」の実施
- 機械設備の運用等における問題点の解決のため、協会が中心になって全国展開等を実施し、解決を図ります。
- ③機械設備技術者の使命・役割とそれを遂行するための育成方法のあり方についての調査研究
- 機械設備の業務に携わる技術者の使命と育成の在り方も変革していく必要があり、その在り方について調査研究を行います。
(4) 会員の活動を広げる取り組み
(車両関係)
- ①車両保守における「若手管理者を育成するスキルアップ塾」の実施
- 管理者としての素養を身に着けることを目標に、2年間の教育コースとして2022年度より引き続き第5期生の募集を行います。
-
- ② 「公民鉄関係車両担当課長連絡会」の開催
- 情報の共有化の場として関東・中部地区の車両担当課長連絡会議を開催します。
- ③「全国鉄道事業者車両担当課長連絡会」の開催
- JR及び公民鉄関係の車両担当課長により、技術情報、保守情報、故障情報などの活発な情報交換を行うと共に、協会活動の情報を積極的に発信します。
- ④「公民鉄車両部長連絡会」の開催
- 公民鉄の車両担当部長連絡会をWeb配信など開催方式の見直しを検討した上で開催し、国土交通省からのご講演や、各社からの情報発信、協会からの情報発信等を行います。
- ⑤「情報共有化」の拡大
- 特殊鉄道事業者への新たな取組みとして、モノレール、新交通システム等の鉄道事業者との交流を通じて課題調査を行い、情報の共有化と共に課題解決について検討します。
- ⑥地域鉄道事業者向けのWeb配信等の検討
- 各種活動への参加機会の少ない地域鉄道事業者のニーズを踏まえ、Webを活用したネットワークの充実を検討します。
(機械関係)
- ①「ハンドブック研修会(勉強会)」の開催
- ハンドブックが完成したものから、随時ハンドブック研修会(勉強会)を開催します。
- ②「現場の取組み事例発表会」の開催
- JR、民鉄、サービス会社等の機械設備業務に携わる現場社員の成果報告の場、聴講者が刺激を受ける場、情報共有の場、自慢の場として、全国ネットで発表会を開催します。
- ③公民鉄の機械設備関係者が必要とする情報提供等活動の実施
- JRと公民鉄ではニーズが異なる事を考慮しながら、要望に沿ったテーマの講演会等の実施を今後も推進します。
3.2 諸制度・試験
(1) 施行資格認定制度
- ①車両関係工事施行技術者資格認定制度の充実
- 資格運用管理者会議、JR・支部担当者会議、支部担当者会議を通して運用上の課題等を解決し制度のブラッシュアップを図ります。
- ②機械検修工事施行技術者資格認定制度の充実
- テキスト及び試験問題の見直し等を実施し、施行の安全確保を図ります。
(2) 車両関係工事施工(公民鉄関係)資格認定制度の実施
プロジェクト方式で本認定制度の枠組みを議論し理解をした上で、教本の内容等の検討を引き続き行います。今後、公民鉄向けの教本を完成させ、この教本を活用した資格認定制度の試行・運用を進めます。
(3) 鉄道分野における外国人材受入れに関する検討会
外国人技能実習制度における鉄道車両整備の職種を追加するため、協会が試験実施機関として検討会、ワーキングを設置して、厚生労働省主催の専門家会議に諮り、職種追加の省令改正へ向けて活動を行います。
(4) 技術力評価制度設立の検討
鉄道車両保守業務従事者の技術力を客観的に評価する方法等について具体的に検討を進めます。その結果を生かして、第三者的に技術力を評価する制度の構築について関係箇所との検討を進めます。
(5) 鉄道車両用材料燃焼性試験
効率的な試験実施体制を構築すると共に、今後の試験方法について、煙と火勢の定量化や海外動向を踏まえた試験方法等について関係箇所と共に検討し、更なる信頼性・有用性の向上に向けて取り組みます。
3.3 教育・知識普及活動
(1) 研究発表会及び特別講演会の開催
「安全・故障防止対策部門」「技術開発・サービス向上部門」「作業改善・提案部門」の3部門の枠組みを継続するとともに、貴重な研究成果を共有するため選考部会各委員の審査の過程での指摘事項を集約し活用することで、論文のより一層の質的向上を目指します。
(2) 「車両と機械」技術セミナーの開催
車両技術一般、先端技術による業務革新、フィールド技術に関して基礎的技術、境界領域問題、先端技術の動向、新形式車両の紹介及び駅サービスロボット、ホームドア、省エネの機械関係テーマなど幅広いテーマについて企画します。
(3) 「車両技術講座」及び「実務研修」の開講
「車両技術講座」及び「実務検修」については、関東及び関西において開催します。また、遠隔地からの参加も可能とするため、Web開催が可能な講座については、リモートでの受講も可能とし、講座受講者の利便性を向上させます。
(4) 個人会員の能力向上のための取組み
個人会員が技術知識を取得し、能力の向上を図ることを目的として、ホームページ上の会員専用ページに、eラーニング全60講座を提供します。
2021年5月より車両関係の基礎的な講座及び機械部門の管工事(1級、2級)等資格試験関係の計10講座程度の開講を計画します。その後、逐次開講します。
(5) 鉄道設計技士(鉄道車両部門)受験対策講習会の開催
鉄道設計技士(鉄道車両部門)試験の受験準備を目的に、分野別専門講師による講習会を開催します。なお、2021年度から試験内容の変更が計画されています。
(6) 海外鉄道調査団の派遣
海外における鉄道車両及び駅機械設備の状況などについて調査・視察する目的で調査団を派遣します。実施に当たっては新型コロナウイルスの状況により判断します。
(7) 専門技術研修会の開催
協会で発行する車両関係の技術図書について、執筆者自身による研修会を「専門技術研修」としてこれまで実施してきました。「補助回路システム」の他、新たに刊行する技術図書について、関東及び関西で計画します。
(8) ポスターセッションの開催
メーカー会員企業と鉄道事業者及びメンテナンス事業会社とを繋ぐ貴重な機会として、定時総会に併施する形でポスターセッションを開催します。
3.4 事業推進体制
(1) 会員サービスの一層の強化
2020年2月からWebサービスを開始し、会員相互の情報交換の場を提供してきましたが、会員が求める情報を得られるよう内容の多様化を検討します。
会員各位のメールアドレス登録により、発表会、見学会、研修会、セミナー等の開催案内、オンライン配信など会員限定の情報発信を積極的に行います。
会員管理業務の効率化を図ると共に、より一層の会員サービスの充実を目指します。
(2) 会員の勧誘と活動の活性化
協会活動への参加、会員相互の情報交換や、新たな情報がいち早く受けられるなど、会員になることでのメリットをアピールして勧誘を進めていきます。既会員のご協力もよろしくお願いします。
(3) 業務プロセスの明確化
協会活動において各種認定制度や試験等を行っており、その他の業務も含めて、業務の正確性、公平性、客観性を確保するため、業務マネジメントシステムを制定しています。
(4) 人材ネットワークの拡充
協会活動の広がりに対応し、協会関係者を核にして有識者を組織化し、会員各位への情報提供の充実と、協会活動の一層のレベル向上を図っていきます。
(5) 「メーカー情報セミナー」の開設
鉄道事業者にとって異なるメーカーの製品情報を詳細に受ける機会を設け、担当者の知見を深めて今後の業務に生かすことを目指します。
(6) 団体会員からの情報発信
団体会員が作成したコンテンツをホームページ上で紹介することや、希望者に配信する仕組みを検討します。
3.5 協会誌発行
鉄道車両機械技術に関する『R&m』誌として、その専門性・技術性を柱に、読者にとって読み易さを併せ持った誌面を目指します。また、読者のニーズにお応えし、特集記事の充実を図るため、メーカー・メンテナンス会社各社の技術記事、技術系の入門・基礎講座を随時計画し、内容を充実します。寄稿の募集についても進めていきます。
また『R&m』誌を補足する情報、ニーズが限定される情報など配信や、『R&m』誌のWeb版の検討を行います。
3.6 各種表彰
特別功績賞、功労賞、功績賞、優秀技能賞などの表彰を行います。また、全国「車両と機械」研究発表会における優秀な論文・提案の表彰、及び『R&m』優秀記事の表彰なども行い、功績、功労の高い方々を顕彰します。
3.7 電子図書館の充実
鉄道車両の技術基準(法令・解釈基準・解説等)の改正内容について、引き続き新規情報の提供を図ります。また、協会で調査・研究した報告書、刊行図書等を広く活用して頂くために、これらの電子文書化を進め、これらの内容を検索可能として、会員が有効に活用できる図書館機能を充実します。