トピックス
今年度のセミナーはすべて終了いたしました。 多数のご参加ありがとうございました。
本セミナーは、鉄道関係の業務に日常携わっている技術者を対象に、この業務の 進歩・技術開発を支援することを目的としたものであります。演題は、鉄道技術に 直結する鉄道車両および機械設備に関するものから近年技術開発が急速に進みつつ ある先端技術分野のことまで、広い分野でテーマを取り上げています。今年度も 下記のとおり、4回に分けて8テーマを計画しておりますので、多数の皆様に ご参加頂きますようご案内します。
記
1. 開催日時および演題・講師
第1回 9月 7日(木) 13:30~16:50 No.1 JR東日本E235系一般形直流電車の概要および モニタリングデータを活用した車両メンテナンス No.2 車両用速度センサーの歴史・精度 第2回 10月5日(木) 13:30~16:50 No.3 ステンレス鋼製鉄道車両構体の技術的変遷 No.4 アルミ合金製鉄道車両構体の技術的変遷 No.5 車両構体に求められる機能、経緯と動向 第3回 11月 9日(火) 13:30~16:50 No.6 浜松工場リニューアルにおける機械設備工事の概要 No.7 海外鉄道建設プロジェクトにおける車両基地設計業務 第4回 12月7日(木) 13:30~16:50 No.8 鉄道車両用電子機器のライフサイクル上の課題と対応策 ~車両の電子化・情報化の進展に伴うライフサイクル上の課題と 対応策調査研究委員会報告書より~
2.場 所
虎ノ門法経ホール 大ホールAB(虎ノ門法曹ビルB1F 東京都港区西新橋1-20-3 Tel 03-5501-2750
3.募集人員 各回100名(定員に達し次第締切とさせて頂きます。)
4.参 加 費 (1) 4回連続聴講の場合は25,700円/4回分一括払いです。 (4回分でお申し込みの場合、会員・会員外の方の参加費は同じです。 また4回分一括払いの聴講券で一度に4名までの聴講ができますので、 参加される御希望回を選定してください。) (2) 1回毎の聴講の場合は7,200円です。会員以外の方は8,200円です。
5.参加申込み (1)E-mailまたはFAXにより参加者または申込者の会社、所属、連絡先住所、 メールアドレスおよび電話番号を記載のうえお申込み下さい。 参加費のお支払いは、参加者または申込者への受講票の送付と合わせてお知らせ致します。
(2)申込先 〒105-0003東京都港区西新橋1-19-4 難波ビル5F (一社)日本鉄道車両機械技術協会 担当 技術企画部 E-mail:rma-k@hyper.ocn.ne.jp TEL 03-3593-5611 FAX 03-3593-5611
6.セミナー申込書(29) 申し込み時のお願い 4回連続聴講券は1回ごと1枚づつでも、特定の1回に4名様聴講でも、いかようにも分割可能です。 ただし、申し込みの際に実際に聴講する回と人員を『申込別』の欄に記入して下さい。
【講演概要】
(第1回 9月7日) No.1 JR東日本E235系一般形直流電車の概要およびモニタリングデータを 活用した車両メンテナンス JR東日本では、現在の主力首都圏通勤型車両であるE231、E233系にこれまでの技術開発成果を取り入れた 次世代通勤車両E235系を開発し、量産先行車は山手線で2016年3月より本格的に営業を開始、量産車は2017 年5月より営業を開始した。 この車両の特長として、優先席の増設やフリースペースの各車両整備、車内情報提供装置の増設、トレイン ネット環境を整備するなど、お客さまサービスの向上を図るとともに、車体の強度向上、改良型戸閉装置の 採用等により更なる安全性・安定性の向上を図っている。また、車両制御システムは新たに列車情報管理制 御装置(INTEROS)を導入し、従来の列車情報管理装置(TIMS)と比較して通信速度が10倍に向上したことで 大容量のデータを扱うことができるようになり、さらにWiMAXによるデータ通信を利用して車両の様々な 機器のモニタリングデータを地上側へリアルタイムに送信して状態把握等に活用することが可能となっている。 本講演では、次世代通勤車両E235系の概要について紹介するほか、これまでの保全体系からモニタリング データを活用した車両メンテナンスの今後の展開に向けた課題や取組について述べる。
No.2 車両用速度センサーの歴史・精度 鉄道において基本となり、安全に直結する物理量として列車速度がある。 この速度の検知は、車軸や駆動用電動機の回転数から車輪径に応じた列車速度に換算する方法が一般的である。 しかし、この方式の場合には、車輪の滑走・空転によって正確な列車速度を検知することは出来ないとともに、 低速になると精度が低下することは免れない。 一方で、列車の制御においては、滑走・空転制御や停車していることの認識のため、高速から低速までの全ての速度 域において誤差の無い列車速度を得ることが必要である。 このためには、車輪の回転数から列車速度に換算する方法でない、列車の対地速度を検知することが必要である。 列車の対地速度を検知するために以下のような方法が考案され試験されているが、現在のところ完成された方法は出来 上がっていない。
(1) ドップラ効果よる速度検知 (2) 画像処理による速度検知 (3) 前後振動加速度の積分による速度検知 (4) GPSを使用した位置変化からの速度検知 (5) 地上の交差誘導線からの速度検知 (6) 空間フィルタ方式による速度検知 等 本講演では、現在実用されている速度検知方式の概観と速度検知方式に求められる条件や仕様、さらには、上記の 今まで取り組まれた各種速度検知方式と今後の展望について紹介する。
(第2回 10月5日)
No.3 ステンレス鋼製鉄道車両構体の技術的変遷 鉄道車両の構体は創世期の木材から普通鋼へと進化し、さらに1950年代半ばよりアルミ合金、 ステンレス鋼が登場する。現在ではこの両者が鉄道車両の大半を占めるまでに至っている。 本セミナーではステンレス鋼製構体の登場時からその後の進化、当時の国鉄での採用から各民鉄での採用 などステンレス鋼製構体の歴史と最新のステンレス鋼製構体について解説する。ステンレス鋼は錆びにくい という大きなメリットの他、冷間加工する事で高強度が得られるなど利点が多い反面、高価、塑性加工 しにくい、入熱に弱く溶接方法が限られる、アルミ合金より重い、意匠製が劣るなどデメリットもある。 これらの克服がステンレス鋼製構体開発の歴史である。ステンレス鋼製構体登場時の背景や導入するメリット、 デメリットを製造する側、使用する側の立場から解説すると共に、その後のステンレス鋼製構体の進化と 開発課題について、構造用ステンレス鋼素材SUS301材の進歩や生産技術の進歩による製造方法の革新を交えて解説する。
No.4 アルミ合金製鉄道車両構体の技術的変遷 鉄道車両の構体を構成する材料は,木材に始まり鋼鉄に発展し,今日ではアルミ合金やステンレス鋼が主流を 占めている.このうちアルミ合金製構体は,開発当初には板材をリベットで組立てていたが,A6005Cや A7204といった材料の開発に伴い,良好な押出成型性を生かした材料を溶接で組立てるようになった. これらの技術発展を受けて,中空押出形材のみで構体を構成するダブルスキン構造が開発された.また,ほぼ 同時期に英国で発明された,材料を高温で溶かさず接合するFriction Stir Welding(FSW:摩擦撹拌接合法)は, ダブルスキン構体の長く単純な継手をひずみなく接合することに適しているので,これらを組合せた構造が広く 採用された. 一方,安全への社会的な要求の高まりから,万が一の衝突時に乗客や乗員を保護する,いわゆるクラッシャブル 構造が求められてきた.アルミ合金の採用には,鉄鋼と比較して破断時の伸びが小さいので技術的ハードルは高い. しかし,数値解析,構造設計技術や材料の進歩により,欧州の衝突構造規格を満足する構造が開発されている. 今回の講演では,材料や構造の観点から,アルミ合金製構体について技術的な変遷を振返りたい。
No.5 車両構体に求められる機能、経緯と動向
鉄道車両の車体に求められる機能としては、第一に、旅客を安全かつ快適に目的地まで輸送することである。
特に旅客の安全性確保の観点で、車体には十分な堅牢さや、走行中に生じる動揺、振動、衝撃に対する耐久性が
求められる。また、万一の衝突や火災等の事故発生時にも、人的被害を最小限に低減することも求められる。
快適性向上の観点では、乗り心地の良さや車内の静粛性、適正な温度環境の維持、さらには高速でトンネル
区間を走行する際の”耳つん”とよばれるような耳の不快感を与えないこと等も考慮され、これらは鉄道が交通
機関としての競争力を維持するためにも不可欠である。
一方、省エネルギーや沿線環境への配慮の観点から、軽量性や合理性との両立も必要である。さらには
省メンテナンス性、経済性やリサイクル性にも考慮が必要である。
このような背景から、鉄道黎明期以来、木造車体から普通鋼、軽量ステンレス鋼、アルミニウム等の軽合金、
さらには新材料・複合材料の適用等、材料の特色を活かした車両構体が開発されてきた。
ここでは、車体に求められる機能や構体材料の変遷、経緯を概説するとともに、主に強度面での車体の構造
要求に関する国内外の規格や、これからの車両構体に求められる機能、開発動向等について展望する。
(第3回 11月9日)
No.6 浜松工場リニューアルにおける機械設備工事の概要 JR東海では、平成22年7月から大正元年創立の浜松工場のリニューアル工事に着工し、今年、平成29年1月に 新検修ラインへの切り替えを実施した。 リニューアル工事では、車体検修場や部品検修場を耐震性の高い建物に建て替え、検修庫を補強する一方、 建物の配置見直しやシンプルな検修ラインの構築により、全般検査工程の効率化を図った。あわせて、最新の 機械設備を導入することにより、人手で行っていた作業の機械化も実施した。 機械設備のリニューアルにおいては、既存設備の使用状態(使い勝手)および保守の状況(機械設備の検修実績) を反映させるとともに、作業環境の改善、検査精度の向上、環境負荷の低減を踏まえ、新規に車体および側カウルの 洗浄・研ぎ装置や水性塗料を使用した塗装装置、仮台車、トラバーサ転落防止装置などを開発し、全体で新設約400台、 移設約300台、改良約40台の工事を施工した。 本講演では、設備ユーザーの意見を取り入れるために導入したDR(デザインレビュー)方式、51社におよび メーカーに対する施工・品質管理をはじめ、新設した主な機械設備について紹介する。
No.7 海外鉄道建設プロジェクトにおける車両基地設計業務 東日本テクノロジー㈱は、鉄道車両と車両基地設備のトップランナーを目差しており、その一環として海外鉄道建設 プロジェクトに参画している。 海外鉄道建設では、ODA、BOT、PPPと種類があるが、当社は主としてODAでの海外鉄道建設プロジェクトにおいて 車両の設計・メンテナンス及び車両基地の設計を実施している。 海外鉄道建設における車両基地の設計は、基本設計、詳細設計、入札図書の作成という順序で進むことになる。 この海外鉄道建設では、一般契約条件が工事種類によりFIDC国際コンサルティング・エンジニア連盟で決められており、 色で区分されRed Book、Yellow Book等と通称されている。 車両基地の設計では、土木、建築がRed、検修設備、電気等のE&MがYellowとされていることが通常である。 本講演では、海外鉄道プロジェクトの流れと当社が実施した海外鉄道の車両基地の設計事例を紹介する。
(第4回 12月7日)
No.8 鉄道車両用電子機器のライフサイクル上の課題と対応策 ~車両の電子化・情報化の進展に伴うライフサイクル上の課題と 対応策調査研究委員会報告書より~ 近年の鉄道車両用の機器には電子機器が多く使用されていることは周知の通りである。導入当初は メンテナンスフリーと言われ、主回路装置やサービス機器、保安装置に至るまで、幅広く導入されてきた。 しかし、経年と共に故障が発生するようになり、それらのメンテナンス方法についても様々な課題が出てきているのが現状である。 一般的な電子機器については、アルミ電解コンデンサに代表されるように約10年程度で寿命となる部品が多くあり、車両の 寿命と合致しないため、車両のメンテナンス周期に併せた効率的な更新が必要となるため、車両に使用される電子機器と 車両(主に車体)との寿命の整合性を図るための方策について、(一社)日本鉄道車両機械技術協会の、「車両の電子化・ 情報化の進展に伴うライフサイクル上の課題と対応策の調査研究委員会」において、以下の事項が議論された。 ・鉄道事業者における電子機器の劣化調査・考察・対応に関する実際の事例 ・装置(主にプリント基板)を構成する主要な電子部品の劣化に対する技術的考察 ・車両と電子機器のライフサイクルにおける整合性、オーバーホール(機器更新)の考え方 ・鉄道車両用電力変換装置の過去からの変遷と今後の方向、モニタリング技術の動向 ・鉄道事業者と電気機器メーカ相互間の課題認識、要望に対する各々の見解 上記の事項に対して、今回は主回路装置のVVVF装置を対象とし、鉄道事業者・電機メーカ・車両に関する研究者や メンテナンス会社の関係者が、相互に議論を行って得られた見解や今後の方向性について解説する。